社員旅行の費用を福利厚生費として経費計上するための条件とは
企業の会計処理のなかで、経費計上できるものはさまざまあります。
従業員をねぎらい、日常の業務から離れてリフレッシュさせる社員旅行もまた、『福利厚生費』で経費計上できる場合があります。
しかし、すべての社員旅行が福利厚生費を認められるというわけではありません。
社員旅行の費用を経費にするための条件を確認しておきましょう。
少額不追求経費にできる福利厚生費の捉え方
コロナ禍を経て、社員旅行が復活の兆しを見せています。
社員旅行は従業員をねぎらう目的のほか、従業員同士や部署間の交流を活性化させるという狙いもあります。
忘年会や新年会、食事補助や慶弔見舞金などと同様に、社員旅行も従業員の福利厚生の一つで、会計処理では『福利厚生費』という勘定科目で仕訳を行います。
しかし、福利厚生費として経費計上するためには、いくつかの条件を満たさなければいけません。
福利厚生とは、企業が従業員に対して支給する給与や賞与以外の報酬です。
給与や賞与が金銭の支給なのに対し、福利厚生は金銭を支給しているわけではないので、いわゆる『現物支給』として扱われます。
たとえ現物支給でも報酬には変わりがないため、原則的には給与などと同じように所得税や住民税の課税対象となります。
しかし、それでは金銭を受け取っていないにもかかわらず、税金が生じることになります。
そこで国税庁では、経済的利益の額が少額の現物給与であれば課税対象にはしない、という通達をしています。
それが『少額不追求』です。ここでの経済的利益とは、従業員が得ることのできる利益を指します。
社員旅行についても少額不追求が適用されるため、一定の条件を満たしていれば福利厚生費として経費計上することができます。
経費計上が認められない旅行の範囲
国税庁では、従業員のレクリエーション旅行について「その旅行の内容(旅行の企画立案、主催や、旅行の目的・規模・工程、従業員等の参加割合・使用者および参加従業員等の負担額および負担割合など)を総合的に勘案して、社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行と認められるもので、少額不追及の趣旨を逸脱してないものと認められるもの」を、福利厚生費として経費計上できる社員旅行と定めています。
具体的には「旅行の期間が4泊5日以内であること」と、「旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること(工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加)」が主な条件となります。
ちなみに海外旅行の場合は「外国での滞在日数が4泊5日以内であること」が条件になります。
たとえば、日本国内旅行で期間5泊6日、旅行費用が一人あたり30万円(うち従業員負担15万円)、参加者割合が全体の50%である社員旅行については、「旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないこと」から課税されたケースがあります。
また、一部の役員だけで行く旅行は福利厚生費にはならず、給与として課税する必要があります。
また、取引先に対する接待や慰安のための旅行の費用も福利厚生費にはならず、接待交際費などとして処理する必要があります。
そして、家族を社員旅行に同伴させる場合も気をつける必要があります。
実質的に私的な旅行になってしまっていると社員旅行とは認められない可能性があるため、自由時間以外は家族にも団体行動を徹底してもらいましょう。
さらに、家族の旅費などは会社の福利厚生費として処理できず給与扱いとなり課税される場合もあります。
そのような面倒ごとを避けるためにも、家族の旅費については同伴した社員に負担してもらうようにした方がよいでしょう。
社員旅行はあくまで任意の行事なので、全員が参加するわけではありません。
だからといって不参加の社員に対し、旅行代金の代わりに金銭や物品を支給してしまうと少額不追求が適用されないので注意してください。
国税庁では少額不追求が適用される額を明確にしておらず、実際に社員旅行を行った場合に、企業が負担した費用が旅行に参加した人の給与として課税されるかどうかは、その旅行の内容などを総合的に勘案して判定することとなります。
社員旅行が経費として認められるかどうかは事前に専門家などに相談しておくと安心です。
※本記事の記載内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。
https://mi-g.jp/mig/article/detail/id/32695?office=W6Gb3xGRtpU%3Dより。
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