戸籍謄本等の取得をラクにする『法定相続情報証明制度』とは
被相続人が亡くなると、残された相続人はしばらくの間、さまざまな相続手続きに奔走することになります。
なかでも被相続人との相続関係を証明するために必要とされる『戸籍の収集』には非常に手間がかかり、これが相続人にとって大きな負担となっている実情がありました。
そこで、2017年に創設されたのが『法定相続情報証明制度』です。
この制度を利用すれば、手続きのたびに被相続人や相続人の戸籍を収集する必要がなくなるというメリットがありますので、今回はこの制度について解説していきます。
戸籍の取得は相続手続きの『壁』となっている
相続が発生すると、被相続人が所有していた不動産や預貯金、株式などについて、登記の変更や名義変更、解約など、さまざまな相続手続きをすることになります。
その際に必ずといってよいほど必要になるのが、『被相続人が出生してから死亡するまでの戸籍謄本等』です。
相続手続きは、自身が被相続人の相続人であると証明しなければできないため、各種手続きの都度、被相続人の戸籍謄本等の束を窓口に提出することになります。
「戸籍なんて簡単にとれるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実際にやってみると、これが大変面倒な作業なのです。
もちろん、被相続人の戸籍の変動が少ない場合は、簡単に取得できることもあります。
しかし、戸籍は、結婚により、新たに作成されますので、少なくとも2通取得すべき戸籍があるということになります。
さらに、養子縁組がなされている場合や本籍地が変更されている場合など、変更回数が多くなれば、集める戸籍もより多くなります。
戸籍を取得するためには、本籍地の役所(市役所・区役所・役場など)に直接赴くか、郵送での請求が必要です。
被相続人が本籍地の移動をしており、以前の本籍地が遠方だった場合には、以前の本籍地にも請求をしなくてはなりません。
戸籍をただ取り寄せたいだけなのに、手続きの都度、手間と費用がかかることになります。
また、前述したような相続手続きの際には、被相続人だけではなく、相続人全員の戸籍も必要です。
そうなると、相続人が多いケースなどでは手間もより多くかかりますし、コスト面でも、1回の戸籍の取得費用だけで1万円を超えてしまうこともあります。
『法定相続情報証明制度』で戸籍の取得を簡略化
この手続きを簡略化しようと2017年に始まったのが、『法定相続情報証明制度』です。
これは『法定相続情報一覧図』(戸籍と相続関係を一覧に表した図)を作成することで、公的に被相続人の法定相続人が誰かをわかるようにするというもの。
相続手続きの際、『法定相続情報一覧図の写し』を提出すれば、戸籍謄本等の束を提出することが不要となります。
つまり、この制度を利用すれば、従来の相続手続きの際にかかっていた手間や金銭的負担が軽減できるというメリットがあるのです。
法定相続情報証明制度を利用したい場合は、全国の登記所(法務局)で手続きをします。
まず、相続人が一度、戸籍謄本等の必要書類を集め、『法定相続情報一覧図』(戸籍と相続関係を一覧に表した図)を法務局に提出します。
すると、法務局の登記官が、その書類を確認したうえで『法定相続情報一覧図』の認証を行い、偽造防止措置の施された専用の用紙で、認証文付きの『法定相続情報一覧図の写し』を発行してくれます。
『法定相続情報証明制度』は、申請料と証明書の写しの発行手数料が無料であり、法定相続情報一覧図の保管期間中(5年間)であれば何度でも再発行が可能ですので、いくつもの相続手続きがある場合などに、スムーズに事を進めることができます。
もちろん、手続きの際に『法定相続情報一覧図の写し』を使うことを義務づけられているわけではありませんので、従来どおり戸籍を一つひとつ集めて手続きをすることも可能です。
この制度により、法務局や大手金融機関等での相続手続きを同時に進行することが容易となるため、費用だけではなく時間の短縮にもなります。
相続に伴う手続きが格段に効率化され、相続登記が促進されることになるでしょう。
煩雑な手続きを少しでも軽くしたい場合は、一度検討してみてもよいかもしれません。
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※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。